主催:アース製薬株式会社 共催:朝日新聞社メディアビジネス局

アース虫ケアセミナー2022アース虫ケアセミナー2022

コロナ以外にも注意したい感染症

2022年 採録record

身近な虫に要注意?
蚊やマダニによる感染症とその治療

忽那 賢志(くつな・さとし)先生国際感染症の専門医
大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学 教授

忽那 賢志 先生

2004年山口大学医学部卒業。関門医療センター、市立奈良病院感染症科医長、国立国際医療研究センター国際感染症センター国際診療部副部長などを経て現在に至る。日本感染症学会専門医。回帰熱や国内初となるデング熱に似た熱帯感染症・ジカ熱などを診断。

世界で一番人間を殺している生物は蚊で、年間80万人以上の方が亡くなっています。蚊は種類によって媒介する感染症が異なり、例えば、ヤブカはデング熱を媒介しますが、ハマダラカがデング熱を媒介することはありません。

デング熱は熱帯地域で流行している感染症ですが、日本でも2014年に代々木公園を中心に流行したことがあります。この時は、海外で感染した人が日本にウイルスを持ち込み広がりました。出血しやすくなるのが特徴で、ひどくなるとデング出血熱と呼ばれ、重症化することがあります。マラリアは、亡くなっている人が一番多い蚊の感染症です。アフリカ大陸で特に流行していて、ひどくなると黄疸が出たりします。ただ、マラリアには予防薬があるので、ほとんどの場合予防ができます。デング熱、マラリアともに、「最近海外に行った」という情報がないと、私たち医療従事者も診断が難しいので、受診の際はその旨をお伝えください。

イエカが媒介するのは日本脳炎です。「日本」と名がついていますが、アジアを中心に流行している感染症です。予防接種が始まってから感染者がかなり減りましたが、今でも西日本を中心に日本脳炎の抗体を持つ豚がたくさん発見されています。これはウイルスの多くが今も蚊や豚の間をサイクルしているためです。ワクチン接種歴を今一度ご確認いただいた方がいいでしょう。ジカウイルス感染症は、妊婦さんが感染すると胎児の小頭症の発生につながることもありますので、妊婦の方は特にお気をつけください。

感染症予防に虫ケアが重要

次に、日本で多く報告されているダニの感染症についてお話しします。ダニ目の中のツツガムシが媒介するツツガムシ病、チマダニ、カクマダニなどが媒介する日本紅斑熱は、どちらも抗生物質で治療できます。ただし、これらの症状を疑っていないと処方されない特別な抗生物質が必要です。受診の際は「野山に行き、ダニに刺された」という情報が重要になります。特に日本紅斑熱は早く治療しないと命にかかわることがあるので、ダニに刺されて熱が出たらすぐに病院で受診してください。

マダニが媒介するSFTSと呼ばれる重症熱性血小板減少症候群は、この10年ぐらいで見つかったウイルス感染症です。名前のとおり血小板や白血球が減り、抗生物質が効かないため、致死率が高くなっています。重症化すると出血をして、イメージ的にエボラ出血熱などに近い状態になります。春先から秋にかけて多く報告されているので、流行地域にお住まいの方は、特にお気をつけください。

蚊やダニが媒介するウイルス感染症を予防するには、虫ケアをしていただくことが重要です。海外、特に熱帯地域に渡航する際、また日本でも山に行ったり、屋外で活動する時は、虫よけ剤をしっかり塗っていただけたらと思います。

2021年採録 2019年採録