主催:アース製薬株式会社 共催:朝日新聞社メディアビジネス局
濱田 篤郎(はまだ・あつお)先生東京医科大学病院 渡航者医療センター 特任教授
新型コロナウイルスの流行は、他の感染症対策にも影響を及ぼしています。例えば本来毎年行うべき蚊の駆除が停滞しており、蚊に媒介される感染症が世界的に拡大しています。2014年に東京周辺でも流行したデング熱は、昨年シンガポールで過去20年の中で一番多い3万5千人の患者が出ました。マラリアは世界の熱帯、亜熱帯地方で流行しており、WHOの試算ではアフリカ地域の感染死者数は今年倍増すると予測されています。
他に蚊によって媒介される感染症としては、黄熱、ジカ熱、日本脳炎、フィラリアなどが挙げられます。日本脳炎以外、国内での流行はみられませんが、コロナが収束して海外渡航者がまた2000万人を超えるようになると、国内で流行する可能性がないわけではありません。
デング熱を媒介する蚊は「ヒトスジシマカ」「ネッタイシマカ」、マラリアを媒介する蚊は「ハマダラカ」です。蚊といえば夜に刺されるイメージがありますが、ネッタイシマカの吸血時間は昼間です。それを知らないで、例えばバリ島で昼間に皮膚を露出して日光浴などをしていると、デング熱の感染リスクは非常に高くなります。日焼け止めの上から虫よけ剤をまんべんなく塗るなど予防が必要です。夜間、室内では虫ケア剤や蚊取り線香などのほか、蚊帳も効果的です。
東南アジアから来日する旅行者や労働者の方が、母国でデング熱にかかっていた場合、日本の蚊にデング熱のウイルスを伝播し、日本国内で流行を起こすということも十分考えられます。
訪日外国人の数はこれからさらに増えていくでしょう。グローバル化社会の今日、蚊が運ぶ感染症の問題は、海外だけでなく国内でも細心の注意が必要です。皆様も日頃からぜひ効果的な蚊の対策をしていただきたいと思います。